9人が争っている28日投開票の衆院東京15区(江東区)の補欠選挙で、諸派の男性新顔の陣営が、街頭演説をする他の候補の隣で大音量で演説したり、夜に他の陣営幹部宅近くで大声を上げたりしているとして、他の陣営から「選挙妨害だ」という批判が出ている。警視庁は、一部の行為が公職選挙法違反(選挙の自由妨害)の疑いがあるとして警告した。諸派新顔側は「選挙妨害ではない」と主張している。
告示日の16日、記者が取材していた区内のJR駅前で、演説の準備をしていた無所属新顔の選挙カーと諸派新顔の選挙カーが並んで止まっていた。無所属新顔や応援弁士の演説中、諸派新顔や陣営関係者は、マイクで応援弁士を名指しして「おい!」と叫んだり、質問を投げかけて「説明しろよ」と求めたりした。近くの電話ボックスの上に上って話す場面もあった。
諸派新顔側の配信動画によると、他の候補の選挙事務所前で大声で演説をしたり、他の候補を支援する政治家宅の前で夜に演説をしたりしている。
無所属新顔ら複数の陣営は告示後、遊説日程を非公表に切り替えた。ある陣営は、諸派新顔の行為を「選挙妨害だ」とし、「日程を公表すると、妨害される恐れがある」と取材に答えた。
諸派新顔陣営の行動について、無所属新顔を支援する政治家の一人は「経験したことがない選挙」と報道陣の前で語った。別の新顔を擁立している政党の幹部はX(旧ツイッター)に「前代未聞の状態。街頭演説の事前告知も控えざるを得なかった」と投稿した。
SNSでも拡散され、同補選で選挙活動が妨げられるような行為が起きているとして国会でも議論になった。22日の衆院予算委で岸田文雄首相は、一般論とした上で、選挙演説を大音響で妨害するなどの行為には対策が必要とし、「選挙制度の根幹に関わる事柄として各党各会派で議論すべき課題だと認識している」と述べた。松本剛明総務相は23日の閣議後会見で「(選挙運動を)妨害するということはあってはならない」と述べた。また、「個別の行動が法に反するかという判断は、今、この段階で私から申し上げることは控えなければならない」とも話した。
警視庁は、諸派新顔側が告示日にマイクでやじるなどして選挙活動を妨害した疑いがあるとして、諸派代表らに警告を出した。
諸派新顔の陣営は23日に会見し、「選挙妨害ではない。立候補した者の言説はどの陣営であれ等しい」などと主張した。警視庁の警告は「指揮命令権の乱用に当たる」などとして、東京都を相手取り、国家賠償請求訴訟を起こしたとも説明した。